どんな人間にも等しく、そして必ず訪れるのが「あの世に旅立つ」というイベントです。

そして、人が亡くなった際には「相続」が発生することになりますが、不動産の相続においては様々な注意点が存在しています。

そこで本日は「不動産相続の注意点を解説いたします!」と題して、不動産を相続する際のポイント、そして相続の基礎知識についてお話ししていくことにいたしましょう。

不動産相続の注意点

 

相続の仕組みについて

では早速「不動産相続のポイント」にいてお話を始めたいところではありますが、まずは『相続とは何か』という点から解説をスタートさせていただきたいと思います。

財産をお持ちの方が亡くなり、その財産を配偶者や子供たち受け継ぐ行為を「相続」と呼びます。

では、「一体誰が相続する権利を持っているのか」ということになりますが、民法ではその優先順位を「配偶者(夫・妻)→子供→親(父・母)→兄弟」の順番であると定めているのです。

但し、相続の優先順位のみを定めたのでは、争いが生じてしまう可能性もありますから、法律は「誰がどれくらいの財産を相続するか」という基本的な取り分についても定めています。(法定相続分)

仮に3人の子供を持つ夫婦の旦那が亡くなれば、

相続権は妻が(1/2)3人の子供が(1/6ずつ)ということになります。

また、子供が居ない場合には、妻が(2/3)夫の両親が(1/3)です。

そして、両親も子供も居ない場合には、妻が(3/4)旦那の兄妹が(1/4)といった具合に細かな配分まで定められています。

なお法定相続の内容からもわかるとおり、配偶者(夫・妻)→子供→親(父・母)→兄弟という優先順位は、順位のみならず「財産の配分」にも大きな影響を及ぼしているのです。

ちなみに、相続人である子供が死亡しており、その「孫」がいた場合には「両親」や「兄弟」に権利は回らず、「孫」に相続権が発生(代襲相続)することになります。

 

このようにご説明すると、「法定相続の通りにしか相続ができないの?」というお声が聞こえて来そうですが、これは「NO」というのが答えです。

当然、相続人同士の合意があればどのような分配の相続も可能となりますし、「遺言書」があればその定めに従うこととなります。

但し、遺言書により全く財産を与えない旨が記載されていたとしても、法定相続分がある兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分(いりゅうぶん)」と言われる財産請求の権利が与えられており、取り分は減少するものの一定の財産を相続することが可能となっているのです。(兄弟姉妹【先程の例における旦那の兄妹】には遺留分は発生しません)

離婚や再婚における相続の基礎知識

現在の日本における離婚率は既に30%を超えているとのデータもあり、4組の家族があれば「その内1家族は離婚を経験する」という、非常に厳しい状況となっています。

そこで本項では、万が一の場合に備えた離婚や再婚に際しての相続知識を解説しておきましょう。

さて、まず気になるのが「離婚した元夫や元妻に自分の財産が相続される可能性があるか?」という点になるかと思います。

なお、こちらはご存じの方も多いと思いますが、その答えは「NO」ということになります。

一方、「別れた夫婦の間に子供がおり、その子供の相続権はどうなるのか?」ということになると、これは親同士が離婚したとはいえ、子供との親子関係に変わりはありませんので、「子供には離婚成立後も相続権がある」というのが答えとなるでしょう。

では、子供を引き取った親が再婚し、子供を新しい相手の「養子」とした場合の相続権はどうなるのでしょうか。

少々意見が分かれそうな気もしますが、正解は「元の親」「新しい親」の両方からの相続権を得ることになります。

但し、養子を迎えた親は、子供の合意さえあれば何時でも養子を解消する「離縁」の手続きを行うことができるというルールになっていますから、「離縁」が成立すれば「義理の親」への相続権は失われることになるのです。

※ここでの解説は「普通養子縁組」についてであり、「特別養子縁組」の場合はこの限りではありません。

 

さて続いては、「子供を連れた親が再婚した後のこと」について考えてみましょう。

もちろん子供にとっては、新しく義理の父や母となった者たちと末永く幸せに暮らせれば全く問題はないのですが、ここで自分を連れ子としてきた「実の親が亡くなってしまった」としましょう。

当然再婚とは言え、残された義理の親は「亡くなった方の配偶者」ですから、実の親の財産の1/2を相続することになります。

 

しかし、ここで更に義理の親が亡くなってしまった場合、実の親が亡くなった際に配偶者が相続した「1/2の財産」は誰のものとなるのでしょうか。

当然『残された子供の財産になる・・・』と思いたいところですが、義理の親と子供が養子縁組をしていない限りは、義理の親の親族にのみに相続権が発生することとなり、残された子供は「元々自分の実の親のものであった財産」を相続することができないのが現実なのです。

このようなご説明をすると、「何やら納得の行かないものがある」と思われるでしょうが、日本の現在の法律ではこれが実情となっています。

相続税の仕組みと控除

さて、相続の概要がおおよそご理解いただけたところで、税金のお話へと入って行きましょう。

相続人同士の話し合いによって無事に自分がもらえる財産が確定しても、「何の税金も払わずに財産を手に入れる・・・」という訳にはいきません。

そしてここで登場するのが「相続税」と言われる税金です。

相続した財産の評価に合わせて課税されるこの税金ですが、その税率は10%~55%という法外な税率となっており、場合によってはもらった財産の半分以上を税金として納めなければなりません。

但し、これではあまりにも厳し過ぎるということで、国は相続税に関して一定の控除額を定められています。

なお具体的には、相続する資産の評価額から基礎控除3000万円、他に相続人一人につき600万円の控除が可能というものになります。

よって、相続人が5人いる場合には、基礎控除3000万円+3000万円(600万×5人)=6000万円の控除を受けることができることになるのです。

こうした控除を差し引いても、まだ資産の評価が残るようならば、そこで初めて相続税の納税義務が生じることになります。(相続財産の評価額によって税率は異なります)

相続税の配偶者控除

前項にて、相続税の最もポピュラーな控除制度「基礎控除」についてのご説明をいしましたが、忘れてはならないもう一つの控除が「相続税の配偶者控除」となります。

その名の通り、こちらの制度は亡くなった方(被相続人)の配偶者の相続分について特別な控除を行うという制度ですが、その内容は「配偶者の法定相続分の全額」、若しくは「1億6千万円までの財産」については課税をしないという太っ腹なものとなっているのです。

この制度を利用すれば余程の資産家でない限りは、相続税の支払いを逃れられそうな気もいたしますが、夫婦どちらかが一人で多額の資産を持っていて、『資産の少ない方が先に亡くなった場合』には、全く意味を成さない制度となってしまいますから、ご注意ください。

なお、別記事「不動産の相続税対策について考えてみたいと思います!」では、相続対策として有効な手法を多数ご紹介しておりますので、節税にご興味がお有りの方は是非ともお目通しいただければと思います。

不動産と相続税

このように相続税に関しては厳格な税制度が設けられている訳ですが、相続財産の中に不動産が含まれていると、事態は更に厄介なことになります。

現金や有価証券であれば、相続対象の価値も一目瞭然となりますが、土地や建物の評価を割り出すのは、それ程簡単なことではありません。

また、現金であれば高額な税率を課せられても、相続した財産の中から納税すれば良いことになりますが、相続対象が不動産である場合には、自宅を半分に切って納税する訳には行きませんし、売却して現金化するのにも時間を要してしまいます。

そこで以下では、不動産相続に関して知っておくべき知識を解説してまいりましょう。

不動産の相続評価

まず、土地の相続税評価に関しては「路線価方式」と「倍率方式」という二つの方法で算出されるルールとなっており、国税庁が発表する路線価図や評価倍率表を基に計算がなされます。

しかしながら、その計算は非常に複雑である上、計算を誤って納税額が足りなくなってしまうと「追徴課税を受ける可能性」もありますので、税理士など専門家にその算定を依頼するのが無難でしょう。

※建物については固定資産税評価額を基に算出されることになります。

但し、相続評価額は実際に市場で売買されている価格(実勢価格)よりも低く評価されますから、不動産による相続は金融資産などより節税が可能となるケースが少なくありません。

納税の時期と方法

相続税が発生することとなった場合、納税の期限は相続が発生してから10ヶ月以内と定められています。

そして相続財産に不動産が含まれており、手持ちの資金で納税が不能な場合には、この期限までに不動産を現金化する必要が生じてきます。

なお、国は不動産に対して現物で納税を受け付ける「物納」を許可しておりますから、必ずしも現金化する必要はないものの、物納の評価額は市場価格よりも安い上、物件によっては物納を拒否される場合もありますので注意が必要です。

分割協議は事前に

相続を完了するには相続人全員が署名・捺印をした「遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)」という書類が必須となります。

この協議書は「誰がどれだけの資産を相続するかを取り決めるもの」となりますが、これが完成していないと「相続税の計算さえできない」ことになるでしょう。

特に不動産の場合には、「誰がどの物件を相続するか」などで相続人の意見が割れやすいものですし、そこから「物件の買取り先を見付ける」などということになれば、10ヶ月後の納税期限はあっという間にやって来てしまいます。

よって不動産が相続財産に含まれている場合には、事前の準備が何よりも大切なものとなりますから、事が起こる前に可能な限りの「取り決め」を済ませておくべきです。

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不動産相続の危険な事例をご紹介!

ここまでの解説にて「不動産の相続に関する知識」は充分に身に付けていただいたことと思いますので、本項では危険な不動産相続の事例や注意点についてお話ししていくことにいたしましょう。

遺言書が作られていない不動産の相続

既に解説した通り、民法には法定相続についての定めがありますが、相続財産の中に不動産が含まれている場合には「遺言書の作成」を強くおすすめいたします。

金融資産の場合、その相続評価額が一目瞭然であるため、法定相続分どおりに分配する際も苦労はありません。

しかしながら、不動産は相続評価額と実際価格に乖離が存在する上、実際にいくらで売却できるかは「売ってみないとわからない」ものですから、法定相続分どおりの分配に同意している相続人同士の間でもトラブルが発生する可能性が高くなります。

その上、物件によっては売却までに長い時間を要する場合がありますから、揉め事が発生してから現金化しようとしても、状況によっては相続税の申告時期に間に合わないケースもあるでしょう。

このように不動産の相続においては、その配分方法について紛争が発生しやすいですから、しっかりと遺言書を作成しておき相続トラブルを最小限に留める努力が必要となるのです。

相続される不動産の価値に大きな違いがあるケース

前項にて不動産の相続トラブルを回避するためには「遺言書を作成しておく必要がある」旨をお話しいたしましたが、分配される不動産の価値に大きな違いがある場合には、むしろ揉め事を増やす結果にもなりかねません。

なお、税理士等に相談すれば事前に相続税評価額を算出することができますので、なるべく均等に不動産を分配することで紛争発生のリスクは軽減されるでしょうが、他にも注意しなければならない点もありますから以下に「一戸建て」と「分譲マンション」、「収益物件」の例を挙げてご説明してまいります。

一戸建て相続の場合の注意点

一戸建てが相続物件に含まれている場合にまず注意すべきなのが、建物のメンテナンス状況となります。

何十年もまともにメンテナンスを行っていない戸建てを相続させられても、屋根の葺き替えや外壁塗装などに大きな費用が発生しますし、シロアリの被害等を受けている場合などには「建替え」も念頭に入れなければならないでしょう。

また、空き家は深刻な社会問題となっていますから、自治体から特定空き家に指定されてしまえば相続人は大きな負担を強いられることになりますから、立地や築年数を十分に検討した上で財産の分配を行うことが重要です。

更には、隣家との境界争いなどがある場合には、相続人に余計な負担を掛けることになりますからこうした点にも配慮が必要となります。

なお、小規模宅地等の特例によって一定の条件を満たす土地は「相続評価額を80%減じる」ことができますから、この点も加味した上で財産の分配をするべきでしょう。

分譲マンション相続の場合の注意点

分譲マンションの相続は「戸建てに比べて気楽なもの」というイメージがあるでしょうが、築年数の古い物件については注意が必要です。

古くなった分譲マンションは管理費や修繕積立金が高額になるケースが多いですし、管理組合が大規模修繕を計画している場合には別途工事費用の支払いを求めらることもあります。

更にマンションの建て替えが議題に上がっているようなら売却も困難になってきますし、建替え費用を各組合員が捻出しなければなりませんから、折角の相続財産が「負の遺産」になってしまう場合もあるのです。

アパート等の収益物件相続の場合の注意点

収益物件を相続する場合には、一戸建てと同様に建物のメンテナンス費用について注意が必要となります。

大型のアパートや賃貸マンションにおいては、戸建て以上に工事に費用が掛かりますのでお気を付けください。

また、「築年数が古い」「幹線道路や線路など騒音が発生する施設に隣接している」といった『収益性に係わる問題』がある場合には資産価値に大きな影響を及ぼすことになりますし、

「ヘヴィな滞納者が住み着いている」などの『管理上の問題点』がある場合には、相続人に負担を掛けることになりますので遺言書を作成する際には注意が必要でしょう。

ちなみに、収益物件においては小規模宅地等の特例によって相続税評価額を50%減額できる場合がありますので、戸建てとアパートが混在している相続では「減税割合の違い」にも配慮するべきです。

分割不能な不動産を持分で相続させる

自分の子供が二人いた場合などには「なるべく公平な相続をさせて上げたい」と考えるのが親心ですが、自宅など分割が不能な不動産を持分で相続させるのは非常に危険な行為です。

たとえ1/2ずつ所有権の持分を持ち合ったとしても、将来的に兄弟の仲が悪化した場合には、その家に住んでいる者は共有者に対して「賃料相当額の1/2を支払い続ける」こととなりますし、

共有物分割請求訴訟を起こされた場合には、最悪、家を売却してその利益を兄弟で折半することになってしまいます。

これでは財産を守るどころか、逆に「住む家を失わせてしまう」ことにもなりかねませんよね。

こうした状況を回避するためには、共有で相続するのではなく

  • 相続人の1人が単独で不動産を相続して、もう1人の相続人対しては現金にて不動産の1/2の対価を支払う(代償分割)
  • 相続人2人で不動産を売却して、売買代金を1/2ずつ分け合う(換価分割)

といった方法で精算を行うのが得策でしょう。

ビルなどを区分登記して相続させる

また、意外に多いのが「ビルなどを区分登記して相続させるパターン」です。

分譲マンションなどで行われている区分登記ですが、実は個人所有の建物でもこれを行うことが可能であり、実際にこの方法で相続財産の分割を行っているケースも珍しくありません。

しかしながら、将来的に相続人の一人が財産を処分したくなった時には、区分登記の物件は非常に厄介な事態になってしまいます。

もちろん、絶対に売ることができないということはないのですが、管理規約も整っておらず、修繕計画も不透明、他の部屋を所有しているのは全て親族なんて物件を購入する者はまず居ないはずです。

また売却ができないからといって、賃貸物件として入居者を募集しても、他の親族が物件に住み続けていれば「音の問題」などで揉め事に発展する可能性は十分にありますし、

奇跡的に現れた購入希望者が悪徳不動産業者や怖い組織に属する方だったりすれば、状況は最悪なものとなるでしょうから、区分登記を用いた相続は避けるのが得策でしょう。

家と土地をバラバラに相続

こちらも非常にマズイ相続の方法です。

家と土地が別の所有者となれば、そこには借地権が発生してしまいますから、土地を相続した者は僅かな地代で半永久的に、建物を相続した者に土地を占有されてしまうことになります。

もちろん仲の良い兄弟や姉妹であれば、それでも問題は無いかもしれませんが、代替わりが発生し、その子供たちや孫たちの世となれば、様々なトラブルが発生してくるのは不可避です。

更には建物を相続した者が破産し、物件が競売にでも掛けられれば、土地を相続した者は「競落人を新たな借地権者として受け入れざるを得なくなります」から、これもなかなかに困った事態となるでしょう。

このように、土地と建物の分割相続は『思った以上に危険な状況を招く可能性がある』のです。

なお、借地権について詳しくお知りになりたい方は、過去記事「借地権とは?わかりやすくご説明いたします!」をご参照ください。

土地を分筆して相続

もちろん充分な接道幅(土地が道路に接する幅)が確保され、それぞれの土地が個別に利用可能な面積となっているのならば、この方法でも問題はありません。

しかし、15坪(50㎡)などの小さい土地を細切れにして相続させると、結局は「一切使い道のない物件を誕生させる」ことになってしまいますし、

他人の所有地に囲まれ、道路に接していない土地を相続させられるのは大きな負担となりますから、将来の土地利用の可能性を充分に考慮した上で土地の分割を行いましょう。

また広い土地であっても、「分割の仕方」や「分割後の土地の向き」によっても、『土地の価値に大きな違い』が生じてしまうこともありますから、分割はじっくり検討してから実行に移すのがお勧めです。

ちなみに土地形状や面積の問題に関しては、過去記事「土地の形状について解説いたします!」及び「マイホームの土地の広さや面積について解説いたします!」にて詳細な解説を行っております。

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不動産相続の注意点まとめ

さて、ここまで解説してきた通り、不動産を相続する際には様々な問題が想定されますので、事前にしっかりと準備を整えておくことが重要となるでしょう。

なお、家庭事情が複雑なお宅の相続においては、「誰々には財産を上げたくない!」なんてお話もよく耳にいたします。

もちろん、遺言書を作成することである程度は相続割合をコントロールすることも可能ですが、法定相続人には遺留分を請求する権利がありますから、特定の相続人に全く財産が渡らないようにするのは困難と言えるでしょう。

但し、財産を渡したくない相続人から暴力を振るわれたり、侮辱を受けた場合については、家庭裁判所に「予定相続人の廃除請求」という訴えを起こすことで、相続人からの排除が認められることもありますから、ご興味がお有の方は是非とも憶えておいてください。

更には、「幼い孫に財産を上げたいけど、その親に財産管理をされるのは気に入らない」という方については、遺言にその意思を書き示すことで、親の財産管理権を排除することも可能になりますので、こちらも知っておくと便利かもしれません。

ではこれにて、不動産相続の注意点を解説の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!