不動産を維持・管理していく上で、司法書士は非常に役立つ存在であるという記事を以前に書かせていただきました。

事実、不動産屋さんが実務をこなす上でも、司法書士は「欠かせない存在」なのですが、実はもう一人非常にお世話になっている専門家がいます。

それは土地の測量や表示登記を担当する「土地家屋調査士」と呼ばれる先生です。

本日はそんな不動産登記と土地家屋調査士に関する知恵袋をお届けしたいと思います!

不動産登記と土地家屋調査士

 

土地家屋調査士ってどんな仕事

土地家屋調査士という資格は、法務省が管轄する国家資格となり、主に測量や不動産の登記を代行する職業となります。

登記の代行をするというと、「以前にご紹介した司法書士とどこが違うの?」という疑問をお持ちになられるかもしれませんが、司法書士は不動産の所有権移転や抵当権の設定など権利に係る登記を担当する専門家です。

これに対して土地家屋調査士は土地を二つに切り分ける分筆登記や、二つの土地を一つに合体させる合筆登記など「表示に係る登記」を代行してくれる方々ということになります。

また、このような土地の分筆・合筆などを行うにあたっては、当然ながら高い測量技術を持っていなければならないため、土地家屋調査士の外見は法律家というよりも、技術者といったイメージの方が多いようです。

なお「測量の専門家と言えば測量士なのでは?」というご意見も聞えて来そうですが、測量士と土地家屋調査士は似て非なる職業となっています。

どちらも高度な測量技術を持つことには変わりがないのですが、測量士は国土交通省管轄の資格であるのに対して、土地家屋調査士は法務省が管轄する資格です。

よって測量士は土地の面積などを測ることはできても、分筆等の登記を代行することはできない資格(登記を扱う法務局は法務省の機関であるため)となっており、表示登記は土地家屋調査士の独占業務となっているのです。

なお「過去に測量士に依頼して、登記をしたことがあるよ!」という方もおられるかもしれませんが、こうしたケースでは、仕事を受けた測量士が付き合いのある土地家屋調査士に登記の依頼を行っているに過ぎません。

よって、極力経費を抑え、スピーディーな測量と登記を行うのであれば、「土地家屋調査士に依頼をするのがベスト」ということになる訳です。

 

こんな時は調査士に依頼しよう!

では次に、土地家屋調査士「どのようなシーンで活躍するか」についてお話ししてみたいと思います。

分筆・合筆登記とその他の登記

冒頭で説明した通り、土地の分割を「分筆登記」、土地の合体を「合筆登記」と呼び、この登記の代行は土地家屋調査士にのみ許可された業務となります。

もちろん、申請するのが本人(土地の権利者)であれば、土地家屋調査士に代行を依頼する必要はありませんが、表示登記はどれも高度な測量技術を必要としますから、やはり専門家に頼らざるを得ないのが実情でしょう。

なお、分筆や合筆の登記なんてお話をすると「そんな作業が必要になることがあるの?」というお声も聞えて来そうですが、

分筆の場合であれば、来たるべき相続に備えて、それぞれの相続人のために土地を二つ、三つに分けておきたい時などに必要となりますし、

合筆の場合ならば、隣地から土地を買い入れ、これを本地に組み入れる際などに行う必要が出て来るはずです。

また、分筆や合筆を行おうと測量をしてみたところ、法務局が認識する土地の面積(登記簿上の面積)と、実際の面積に大きな差が生じてしまった場合には、

謄本上の面積(法務局の面積)を実際の面積に合わせる地積更正登記という作業が必要となり、こちらの登記も土地家屋調査士が管轄する業務となります。

更には、登記簿上で定められた「宅地」や「畑」等の地目を変更する登記(地目変更登記)についても、調査士が担当することとなっていますから、不動産を扱う上で、土地家屋調査士は欠かすことのできない存在となっているのです。

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境界の確定と立合い

また、前項で解説した合筆や分筆登記等を行うためには、対象の土地に接する近隣土地所有者の方々と「境界の確定」作業を行い、筆界確認書という書面を法務局に提出しなければなりません。

そして、この境界確定の作業は土地の測量を行った後、実際に現地で各所有者たちと立合いをした上で筆界確認書を取り交わさなければなりませんし、万が一境界標が紛失している場合などは、その復元も行わなければならないのです。

こうした状況でも土地家屋調査士に依頼を行っておけば、測量はもちろん、お隣さんへのお声掛けから境界標の復元、そして登記の申請まで、一括でお願いすることができますから、これは実に助かりますよね。

なお、日々こうした業務を行っているため、土地家屋調査士は境界紛争の専門家という側面も持っています。

よって、お隣と境界線のことで揉めた際などには、調査士に依頼することで、失われたと思われた境界標を地底深くから発掘してもらうことも可能ですし、

どうしても境界標が発見できない場合には、法務局に残されたいた古いデータを基に専門家としての助言を行い、境界紛争を解決に導いてもらうこともできますから、

境界でトラブルになった際には、まず調査士に相談してみるのが得策と言えるでしょう。

更に、これでも境界に関する紛争が解決できない場合には、土地家屋調査士を介して法務局へ「筆界特定制度(法務局が境界線を明示する制度)」を利用する旨の申立や、土地家屋調査士会(ADR)が運営する「境界問題相談センター」が行う調停制度を利用することも可能です。

但し、これらの制度を利用してもその判断には法的な拘束力を伴わないため、最終的には「筆界の確定を求める訴訟(筆界確定訴訟)」にて決着を付けることになり、弁護士の出番となりますが、ここでも土地家屋調査士の協力なしには勝訴を掴み取ることは困難でしょう。

このように境界を巡る問題については、「土地家屋調査士はなくてはならない存在」といっても過言ではないのです。

※境界紛争の解決方法については、別記事「境界問題の解決法について解説いたします!」にて詳細な解説を行っております。

建物の表示登記

不動産登記法では、建物の新築に際して「一定期間内(30日以内)に建物の表示登記(建物の面積や構造等を示す登記)をする」ことが義務付けられています。

また、建物の増築や構造の変更などを行った時にも、表示登記を変更することが必要です。

ちなみに、こうした建物の表示登記の代行も土地家屋調査士の仕事となりますが、通常は建築を請け負った工事業者が付き合いのある地家屋調査士を施主に紹介して、登記をしてもらうパターンが殆どでしょう。

しかしながら、土地家屋調査士の中には非常に法外な費用を請求し、建築会社にバックを渡している方も多いようなので、地主さんであるならば、信頼の置ける調査士を見付けておくのがおすすめです。

また、建物の表示登記においては、取り壊しを行った後に行う滅失登記も非常に重要なものとなります。

不動産登記法においては、新築時と同様に取り壊し後も滅失登記を行うことが義務付けられていますが、実際にはこれを行わないまま放置されているケースが少なくありません。

仮に滅失登記を行わなくても、それ程重い罪に問われることはありません(10万円以下の科料となります)が、対象の土地を売却する場合に、古い建物の登記が残っていると「買い手が住宅ローンを利用することができないケース」もありますので、くれぐれも登記を怠らないようにご注意ください。

※滅失登記をしていない物件に関する詳細は別記事「建物滅失登記をしていない土地の取引体験記!」をご参照ください。

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不動産登記と土地家屋調査士まとめ

さてここまで、不動産をお持ちの方とは切っても切れない関係にある土地家屋調査士について、ご説明をしてまいりました。

前回の記事にて解説した司法書士も、地主さんにとっては非常に大切なパートナーとなりますが、土地家屋調査士ならではの仕事も意外に多いものですから、調査士との縁も是非大事にしていただきたいところです。

そして、信頼できる司法書士と土地家屋調査士の両方が揃えば、不動産の管理や運営は正に「盤石なもの」となりますから、この記事を機会に彼らとのお付き合いを始めてみては如何でしょうか。

ではこれにて、不動産登記と土地家屋調査士についての知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。