今や多くの方々が、マイホームとして日々の暮らしを送っているのが分譲マンションです。

なお『マイホームを購入しよう』と決意した際には、まずは「マンションにするか?戸建にするか?」の選択を迫られるはずですから、もはや分譲マンションは我が国の住宅事情を語る上で『欠かすことのできない存在』と言えるでしょう。

またマンションは販売価格も手頃ですし、室内以外の管理や修繕は管理組合が行ってくれる上、売却の際には瑕疵担保責任を負うリスクも非常に低いなど、

『正に良いこと尽くめ』とも言われていますが、その唯一の弱点と言われているのが『建替え』に関する問題なのです。

そこで本日は「要除却認定マンションとは?という疑問にお答えします!」と題して、今大きく変わりつつある分譲マンションの建替え問題について解説してみたいと思います。

要除却認定マンションとは

 

分譲マンションの建替え事情

では早速、分譲マンションの建替え問題について考えてみたいと思いますが、まずは「建替えを取り巻く現状」から、お話しさせていただければと思います。

既にマンションにお住いの方の中にはご存じの方も多いかもしれませんが、分譲マンションの建替えに当たっては組合員の4/5(団地型は加えて2/3以上の議決権)の賛成が必要です。

また、仮にこれだけの賛成票が集まったとしても、建替えが可能な程の修繕積立金を保有している管理組合は稀ですから、それぞれの組合員がローンを組み、建替え費用を捻出する必要があります。

もちろん分譲当初から住み続けている人間ばかりなら「住宅ローンも既に完済済み」でしょうが、後から中古物件としてお部屋を購入した組合員にとっては「更なる費用を捻出すること」などできるはずもなく、結果的に建替えは『絵に描いた餅』に終わってしまうことが殆どなのです。

事実、分譲マンションの建替え実績を見てみても、全国に10万棟以上あると言われる建物の中で建替えに漕ぎ着けることに成功しているのは僅か200棟程であるといいますから、このデータを目の当たりにすれば『建替え問題が如何に深刻であるか』をご理解いただけることと思います。

 

建替え円滑化法の施行と改正

そして建替えのできない築年数の古い分譲マンションが増え過ぎてしまえば、国土の円滑な利用が妨げられてしまいますし、居住者にとっても「非常にデメリットが大きい」ことは敢えてご説明する必要はないでしょう。

更に1995年には阪神淡路大震災による甚大な被害が発生しており、「耐震性に問題のある古いマンションが半永久的に建替えられないという状況を改善するべきだ」という世論も高まって行きます。

こうした分譲マンションの建替えに関する事情を憂慮した政府は、2002年にマンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下 建替え円滑化法)を成立させ、この問題に一石を投じることとしたのです。

しかしながら建替え円滑化法は施行されたものの、その効果の程は限定的なものであり、建替えの行えないマンションはその後も増え続けて行きます。

そこで政府は、以降も何度か「建替え円滑化法」の改正を繰り返しますが、際立った効果を得られない状況が続いていました。

ところが2014年6月の改正では、これまでには無かった「画期的な特例」が建替え円滑化法に加わることになります。

その特例とは「マンション及びその敷地売却に関する特例」と呼ばれるもので、建替えに際して資金の捻出が困難な場合に、

一旦土地と建物をマンションデベロッパーに買い取ってもらった上で、新しい建物を建築して再分譲、住人は売却で得た資金を元に新築したマンション(建替えたマンション)の部屋を購入するという斬新なものでした。

確かにこれならば、区分所有者が新たにローンを組む負担が無くなりますし、現在住宅ローン返済に追われている新参者の居住者からも賛同が得やすくなりますよね。

また、「新たに建つマンションが気に入らない」という者には、譲渡益にて「他の物件を購入する」という選択肢も出て来る訳です。

ただ、ここで浮かんで来るが「果たしてそんなに上手く事が運ぶの?」という疑問なのではないでしょうか。

そこで次の項では具体的な建替えプロセスや、この制度の利用に際して欠かせない要除却認定マンションについてお話しさせていただきたいと思います。

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売却手順と要除却認定マンション

さて前項でもお話しした通り、「マンション及びその敷地売却に関する特例」を利用する上で『欠かせない制度』となっているのが、これまた新たに制定された「要除却認定マンションの認定制度」となります。

この制度は建替えが必要とされるマンションに対して、行政が「要除却認定マンション」との認定を行うことをできるというものであり、

要除却認定マンションに認定された場合には、行政は管理組合に対して除却(取り壊し)の「指導」や「助言」、場合によっては「指示」までできるという強制力を有しているのです。

また、組合員の中に取り壊しに反対する者があれば、行政は「その者の名を公表することも可能」となっていますから、これは堪ったものではありませんよね。

そして、このようなお話をすると「もし自分が住んでいるマンションが要除却認定マンションの烙印を押されてしまったら・・・」と不安に感じるかもしれませんが、あくまでこの認定が行われるのは「管理組合から申請があった場合」に限られますから、その点はご安心ください。

実はこの制度、多くの組合員が建替えを希望しているにも係らず、少数の反対派の人間により建替えが妨害されている場合の「救済策」という位置付けとなっているのです。

なお、一端「要除却認定マンション」に認定されれば、先にお話しした指導や助言以外にも様々な建替え支援を受けることが可能であり、その中でも重要なのが「組合員4/5以上の賛成で敷地売却の決議が可能になる」という特例となります。

既に申し上げた通り、建替えには組合員4/5以上の賛成が必要となりますが、これが敷地の売却となれば5/5、つまり全員の賛成が絶対条件となるのが原則です。

但し、これでは「敷地の売却など実現不可能」となってしまいますから、取り壊すべき『要除却認定マンション』という烙印を押した上で「4/5以上賛成で敷地売却を認める特例制度」を設けた訳です。

そして管理組合で「売却決議」に成功すれば、次は合意者の3/4以上の賛成票で『敷地売却組合』を組織し、マンションの買取業者(デベロッパー)を探すこととなります。

ちなみに「民間企業であるデベロッパーが既にマンションが建っている土地なんて買ってくれるの?」という疑問の声も聞こえて来そうですが、現在マンション分譲業者は用地の確保に四苦八苦している状態ですし、

建替えが目的のプロジェクトであれば、「売却で得た資金で新たに建つマンションの部屋を購入する住人の存在」によって売れ残りが生じる心配もありませんから、デベロッパーにとっても決して不利なお話ではないのです。

また、行政は要除却マンションの認定を行うことで「敷地の容積率の緩和」が行えるルールとなっていますから、デベロッパーはこれまで以上に大規模なマンションを建築することが可能となりますから、『販売戸数を増やして、より多くの利益が得られる』というメリットも生じます。

こうして敷地売却が完了すれば、デベロッパーは行政の正式な許可を得た上で事業に着手し、反対派住人もこれに対抗することは許されませんから、ここで念願のマンションの建て替えが実現できるという訳なのです。

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要除却認定マンションまとめ

さてここまで、要除却認定マンションとこの制度を利用した「敷地の売却・建替えの流れ」を見てまいりました。

分譲マンションの建替えに関して大きな影を落としていた「資金面の問題」を見事に解決した上、「反対派住人も完全に抑え込むこと可能」という要除却認定マンションの制度は、正に画期的なシステムということができそうです。

また、新たなマンションが気に入らないという方は「売却で得た資金で好きな物件への買い替えも可能」ですし、住宅ローンの支払いに追われている組合員には「繰り上げ返済のビックチャンス」ともなり得ますから、これは正に三方良しの制度となりますよね。

但し、これから中古マンションを購入しようとしているのに、実はその物件が「要除却認定を受けていた」などということになれば、かなり厄介な問題に発展しますから、この点だけにはご注意いただきたいところです。

ではこれにて、「要除却認定マンションとは?という疑問にお答えします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。